富嶽三十六景

 葛飾北斎が、富士山のある風景を最初に三十六図描いて、その後十図が追加されて、四十六枚のセットになっているそうです。

(データ有のものは、お問い合わせいただければ直ぐに図面を送付出来ます。他は、お時間をいただきたく。)

東海道保土谷(データ有)

 保土ヶ谷の近くの品野坂は、松並木が見事でここから富士が望める景勝の地でした。北斎はその松の枝振りを見事に描いています。松並木を透かして見える富士山も綺麗です。本作はフランス印象派の画家モネの名作「ポプラ並木」に影響を与えたことでも有名です。松の間から見える富士山の姿は『物の間、その向こうに見える姿』という、それまで西洋では描かれなかった風景でした。

 沢山の松、その間から見える奥の風景が分かりやすくなるように構成しました。街道と奥のとの間のフィールドには何もありません。右の土手の土留めの上草は、垂れ下がった様子をしっかり表現しています。元の絵の雰囲気をそれなりに表現できたと思います。

相州江七里浜(データ有)

 七里ヶ浜は、神奈川県鎌倉市に位置する海岸です。夏の相模湾、現在の鎌倉稲村ヶ崎から見た富士です。前景にあるのは鎌倉山で、中景には七里ヶ浜の集落が描かれ、その先に小動岬(こゆるぎみさき)が大きく、左に江の島が極端に小さく描かれています。浜に打ち寄せる波も北斎は細かく描写しています。

 小動岬が強調されるように構成しました。すやり雲(画面構成の大和絵の手法)を右背景から連続して岬まで配置し奥行きを表現すると共に、奥に丹沢の山を描いて雰囲気を出しています。波内際の波も少し立体化してそれらしくしてみました。

相州江の島(データ有)

 片瀬浜から見た春の江の島、萌え出る若葉や参道、両岸の茶店や家並みが細かく描かれています。潮が引いた砂州に、人々や馬、駕籠など参詣に行く人々の様子が見えます。砂州の両側に寄せる波の泡の様子などうららかな春のほのぼのとした雰囲気が伝わってくるような作品です。

 元の絵の雰囲気がなるべく出るように全体の構成を決めました。島の内部に折り重なる全ての家々を実体化するにはスペースが十分でないので、茶店、旅館、家屋を意識して設計・配置して元の絵の雰囲気に近づけています。絵では島の裏側は見えないのですが、作品では江の島の崖や岩屋の雰囲気を出しました。左側の背景は、「相州江の島」が「相州七里浜」の次となることを意識して七里浜の景色(こゆるぎ岬)が見えるかたちにしました。

山下白雨(黒富士)(データ有)

 富士山の頂上付近の青空と雲、下界のにわか雨(白雨)といった天候を対比させて描き、自然を超越する富士の雄大さを見事に表現した作品とのことです。「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」とともに、シリーズの三役のひとつです。静の凱風快晴が「赤富士」と呼ばれるのに対して動の「黒富士」と呼ばれています。

 「赤富士」比べて動的な感じを出すように、山体を少し手前に膨らませると同時に元の絵に似せて尖ったイメージを強調しています。すそ野の黒雲は、雲の存在を際立たせる様に「透明シート」を活用しました。そのシートの上に雷が光っています。(最も黒すぎて透明感が分かりにくいですが、データではもっと薄くしました)

相州梅澤左(データ有)

 梅澤は東海道大磯宿と小田原宿との間にあって押切川のほとりで富士が眺められる場所として茶屋が並び休息所として繁盛したそうです。

 藍色の富士と丹頂鶴、うす紅色の雲、幻想的な色合いが美しい作品です。富士と鶴はおめでたの画題で、鶴が七羽という数も縁起がよいようです。

  起伏に富む丘や山々、立体感を出す様式としての雲々など複雑な元の絵をなるべく再現するように努め、多くの部品パネルを使用しました。設計の効率を向上するためにツールの改良も行っています。細かい灌木群も設計し配置しました。

 雲は、背景のものに加え、奥の地上付近の雲海、右背景から飛び出す立体的な階層雲、手前の平面雲などいろいろと変化を付けています。

 主役の鶴も立体化しました。全体の構成から見て大きくできないので、大きい部品パネルで設計してから、小さく縮小した展開図を作っています。

 全体に小さい部品も多く、制作は大変でしたが完成の満足度は大分向上しています。

遠江山中(データ有)

 久々に富嶽三十六景を制作しました。遠江は現在の静岡県、山中は北遠方面(天竜地区)かなと思われています。江戸幕府の直轄領で林業が盛んでした。

 三角形の構図が特徴的(斜めに描かれた巨大な材木、材木をささえる支柱、支柱の間から見える富士山、そして焚火の煙と材木の交差)だそうで、北斎の力量が光る傑作と言われるそうです。

 幾何学的なので逆に設計と制作は意外とスムーズに行きました。右側の丘や材木の先端などちょっと凝って凸凹させました。 

神奈川沖浪裏(データ有)

 今一押しの作品です。世界で、ダビンチの「モナリザ」に次いで二番目に有名な絵だそうです。それに恥じないように結構頑張りました。波の内側が湾曲していたり、波頭が飛び散っていたりとペーパークラフトとしては高度な作りです。船も小さくて大変です。これに挑戦する事で、設計技術(徐々に書いてゆきます)が大分向上しました。

凱風快晴(赤富士)(データ有)

 「神奈川沖浪裏」「山下白雨」とともに、富嶽三十六景の三大名作のひとつと言われるそうです。全体の形は滑らかでペーパークラフトとしての設計はそれ程は難しくは無かったのですが、逆に制作の際のアラが目立ってしまいます。制作技術も上げていかなければ・・・

尾州不二見原(データ有)

 幾何学的構図を好んで使った北斎の絵の例として良く出てくるそうです。三角形の富士山が、丸い桶を通して遠くに見えます。「桶屋の富士」とも呼ばれるようです。桶の板を加締める細長い竹や道具の木槌等細かい制作作業が大変でした。設計も桶の板を一つ一つ繋ぎ合わせる方法で行いました。