装画は、イラストレータとして活躍されている草野碧(みどり)さんです。多くの書籍の挿画も担当されています。
『月まで三キロ』の書籍表裏のイラストは、どこかの川沿いの道路から見上げた月と、遠くの町や雪の積もった山の風景です。奥に鉄橋があります。そして何故か、交通標識の裏側が大きく描かれています。
物語の中でタクシーの運転手が言います。――「ほらこれですよ」ポールにつけられた青い金属板。道路の案内標識だ。・・・<月 Tsuki 3Km>月まで三キローー。確かにそう書いてある。――えっ、うそー。何で月まで三キロって案内してるのでしょう?
また、物語の中で運転手が言います。――「種明かししますとね、さっきの鉄橋の先に、『月』って名前の集落があるんですよ。浜松市天竜区月」――そうだったのか。月村を示す標識だったのですね。その標識はココに有ります。そして挿画と同じ景色が見える場所は、全く同じではないですが、ココら辺ですね。
ということで、解けた謎を踏まえて作品を設計しました。
今回、書籍の表紙となる装画の立体化となりましたが、風景画なのでいつもと同じ調子で設計・制作することができました。浮世絵とは異なった趣があって楽しく進められて、なんか癖になりそうです。
作品のメインは「月」です。:遠くの物ほど小さくなるので、最後には立体化せず模型の背景の部分に絵として描かれているだけの状態になります。しかしながら、今回の「月」は、近いのです。何しろ、奥の山々よりも近い三キロ先なのですから、立体化しないわけにはいきません。頑張りました。
他の見どころは、「裏」です。立体模型なので、絵画には無い向こう側から見た部分を表現することができます。その中でも以下をちょっと頑張りました。
手前の道路標識の裏:標識の形は上に尖った「五角形」。なので、指示標識の中でも特別な、「横断歩道」を示すものです。作品では、『きっとそうだ!』、と思って月への横断歩道にしました。
道路のガードレールの裏:手前から見たガードレールは、暗い影として描かれています。向こう側から見れば、当然月の明りに照らされて白く輝いているはずですね。表と裏で異なった絵として表現しました。
川から道路にかけた土手:元の絵では見えない部分になります。月に照らされながらもちょっと暗めの石垣として作りました。
そして、やっぱり「月」の裏です:作品の後ろにある蓋を開けると月の裏側が見えます。
細かい形状の部分は難しくなります。
くねった道路:道路は手前から向かって左側の奥へとくねっています。そして、遠近感のために左奥に次第に小さく描かれています。奥の小さい部分は、もはや手の指の大きさでは工作が無理な状況でした。ピンセットを使って何とか頑張りました。
鉄橋の横桁:部品の幅は、なんと1㎜以下です。しかも、表と裏の部品を貼り合わせてあります。切り抜いた部品の白い部分をペンで赤く塗りつぶしたり、部品を貼り合わせたりの作業に、逆ピンセット(押すと広がり、手を離すと閉じる)を活用して頑張りました。